声優の藤原啓治さんが、2020年4月12日、癌のためお亡くなりになりました。
55歳という若さでした。
藤原さんは、アニメ・クレヨンしんちゃんの父親・野原ひろし役でおなじみの声優さんです。1992年~2016年にわたり、つとめられました。
ぼくが忘れられないのは、「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲」という映画です。
2001年に公開された作品です。21世紀を嫌うイエスタディ・ワンスモアという集団の洗脳によって、子供時代に幼児退行させられた大人たち。
イエスタディ・ワンスモアに立ち向かうのが、クレヨンしんちゃんです。
印象的なのが、洗脳から解けた野原ひろしと、イエスタディ・ワンスモアのリーダー・ケンによる会話です。
20世紀の世界から、21世紀の世界へ戻ろうとする、野原ひろしにケンが
「戻る気はないか」と問う。
野原ひろしは、即答。
「ない!俺は家族と一緒に未来を生きる」
すると吐き捨てるように
「残念だよ。野原ひろし君、つまらぬ人生だったな」
「俺の人生はつまらぬなんかない。家族がいる幸せをあんた達にもわけてあげたいくらいだぜ」
と懐古主義に代表されるケンを哀れみつつ、家族とともに未来を生きる意志を表しました。
この時の台詞が、頭から離れません。藤原啓治さんによる野原ひろしの力強い声。
今までのどこか頼りない野原ひろしのイメージが刷新されました。
変化についていくのが大変で、
これからどう生きるべきか不安で、わからなくて、
何をするにしても勇気がいる現代。
もしかしたら不幸になるかもしれないし、
困難なことが起きるかもしれません。
当然、変わらない方が楽です。
変わらないで未来に行かない方が、
昔のままの方が、よっぽど楽しいしし、イージーモードで生きていけます。
それでも変わることを、
どんなことがあっても未来を、
家族と生きていくことを、
野原ひろしは選びました。
変化を受け入れることを、選びました。
この映画の世界は、今の社会にピッタリな比喩だと考えられます。
ぼくはこう受け取りました。
昨日と同じ自分ではいけない。
過去と同じ生きた方ではいけない。
昨日を生きた方が、過去を生きた方が楽です。
しかし僕たちは未来を、明日を生きなければなりません。
どんなことが起きても乗り越えるためには変化が必要です。
変化を受け入れて、自らの未来を手に入れられます。
新型コロナウイルスを受けて、
自分は何を変えられたか、どんな変化を受け入れたか、
何かに甘んじようとしていないか、あらためて考えさせられます。
ぼくたちが変化できることを考えた結果、
新しい作品をすることにしました。
新しい作品については以下の記事を参照→
今までにないことばかりに挑戦するので結構大変です。
ただ何も変わらない「命はいのち」は、イエスタディ・ワンスモアのケンと同じです。
大切な人たちと生きたい未来があるからこそ、
今回の作品を手がけようと思いました。
これまで、がんと戦う闘病生活ではなく、病気を受け入れて楽しむ遊病生活の市民ミュージカルを展開してきました。今回は、新型コロナウイルスをはじめ現代の苦難をエンタメの力で乗り切るオンライン劇場を披露します。
病気や災害、経済不況など、これからも大変な状況が続きます。
だからこそ今まで通りではなく、新しい向き合い方ができる作品を発表できればと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。